サァー…

四月の雨の音は優しい。

外は薄く霧がかかり、いつも見慣れた景色さえ、
白いベールをかけたように柔らかく映る。

寝ている間泣いたのと気圧の低さのせいで、
私はしばらくそのままぼぉっと窓を眺めていた。


「起きてたんだ?」


突然後ろから抱きすくめられて、我にかえる。


「なんか目がさめちゃったの。」


昨日着ていたワイシャツを羽織り、ケンジが私を抱きしめる。

週末、ケンジが泊まりにくるのはもう当たり前になっていた。

むしろ一緒に暮らさないかと何度も言われているけれど、
なんとかごまかして今のままを保っている。

嫌いなわけじゃない。

ただ…なんとなくふみきれないのだ。

ケンジにはきちんと説明できないまま、
結婚するまでは…結婚するまでは…と先のばしにしてきたけれど…


一緒に住む事で見えない何かが変わる事が恐いのかもしれない。


知りすぎる事で離れることが恐いのか。

それとも…


近づきすぎるのが恐いの?

そんなわけはない。

付き合って二年間、ケンジに不満を持った事なんて一度もなかった。

きっときっかけがないだけだ。



photo by Studio-Aoi Kotodama-
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