「どうしたの?」


片手にポップコーン、もう片方にコーラを持ったケンジとすれ違う。

私は手に持っているチケットを、ケンジの前でヒラヒラとさせた。


「落ちてたの。」


ケンジが不思議そうにあたりを見回す。


「落としたような人も見当たらないし…届けてこようかと思って。」


私はポップコーンと引き換えに、ケンジへチケットを渡した。

とたんにケンジが悪戯っ子のような顔になる。

「これ、今日のだね。」


ケンジは嬉しそうに呟いた。

私は嫌な予感がして、慌てて首を横に振った。


「だめだよ。ちゃんと届けなくちゃ。」


しかしケンジは届けるどころか、ポケットにつっこんでしまった。


「だめだって。探してる人がいるかもしれないし。」
かえして、といって取り返そうとしたが、ヒラリとかわされてしまう。

ケンジは私の困り顔なんて全くおかまいなしに、
私をすりぬけてまっすぐに歩いていく。



photo by pancakeplan
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