「信じらんない!」


販売員に聞こえないように小声で話す。


拾ったチケットなんて後ろめたい…と呟く私をケンジがなだめる。


「千世、今日誕生日じゃん?これさ、きっと神様からの贈り物だって!」


神様は拾ったものは届けなさいって言うと思うけど…

ブツブツ言う私の手の平に拾ったチケットを握らせる。


「見てみなよ。」


ケンジに言われるまま、私はチケットに目を落とした。


ハッキリと印刷された文字には「ラストシーン」とある。


「それさ、千世が見たがってた映画じゃん?すごい偶然っ運命的!」


『ラストシーン』

それは前から見たいとケンジに話していた恋愛映画だ。

最近公開されたばかりで、無名の新人女優が演技の上手さを高く評価されていた。


「俺さ。千世の後ろの席とったからさ。見ようよ。」

ケンジは恋愛映画が苦手なはずだったけれど…


私は返事をするかわりに、その丸い瞳を覗き込む。

まるで子犬のようにキラキラとした目。

ケンジが犬だったら今頃尻尾をブンブン振っているだろう。


私は想像してブッと吹き出した。

ま、いいか。
たまには私に合わせてもらうのも悪くはない。

今日見る予定だったアクション映画は、次きた時にまた二人で見る事にした。


誕生日プレゼントか…
神様も粋な事をやってくれる。

私はチケットをにぎりしめ、『神様』とやらに感謝した。
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