息が止まるかと思った。

違う。

一瞬止まった。







自分からジーッと見ていたくせに、いざ振り返られると気まずさが襲ってくる。

彼は私をマジマジと、私がそうしたように見つめてきた。

膝の上におかれた私の手の平に、じっとり汗が滲む。

目を合わせているのに耐えられなくなった私は、自分の膝へ視線をそらした。

その瞬間。

フッと彼のー…
鼻で笑ったようなー…
明らかに好意とは違うものを感じた。

気まずさを残したまま私がもう一度彼を見ると

視線の先には…

先程感じた凜とした雰囲気はなく、ただ冷ややかな感情だけが浮かぶ…

彼の瞳があった。




な、なに?



彼は私の驚いた顔を確認すると、再び視線をスクリーンへ戻した。
私が何かした?

一瞬感じた胸の鼓動は、跡形もなく消え去り、変わりに胸には不信感が芽生えていた。

初対面で女性の顔を馬鹿にするなんて。

最低なやつ!!




結局私は、見たかった映画の内容も、話題の新人女優の演技のうまさも、
ちっとも頭に入らなかった。

ただ隣に座る、失礼な男に腹をたてて。

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