【引かれたレール】



「…だと思うんだよね。千世聞いてる?」


ケンジに問い掛けられて、ふと我にかえる。


「あ。ごめん、なんだっけ?」


私はできるだけ身を乗り出して答えた。



映画館を後にした私とケンジは、フランス料理を食べに来ていた。

今日の日に、ケンジが予約してくれていた店は
一日五組までの、雑誌で話題の店だった。

店内を少しオレンジ味を帯びた光が照らし、白い椅子とテーブルが並んでいる。
話題の店にしては、やけにこじんまりとした雰囲気だが、私はかえって落ち着いた。

にこやかなボーイがグラスに注いだのは、透き通ったルビー色のロゼワイン。


「千世は気に入ると思うんだけど。」


ケンジは嬉しそうに言った。
口に含むと、ほんのりベリーの香りがして飲みやすい。

透き通った綺麗な赤は、まるでケンジの想いを映しているようだ。

「おいしい。すごく。」

「ならよかった。」


ならよかった…

その言葉に…映画館での出来事が思い起こされる。


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