ピリリリ…ピリリリ…

携帯のアラームが鳴っている。
枕の下にあるはずの携帯を目を閉じたまま探すと、携帯はガタッとベッドから落ちた。

…なんだか頭がズキズキと痛む。
私は携帯を拾いあげると、もう一度布団にもぐり込んだ。

夢…だったのか。

たんぽぽの花と…男性がでてきたんだっけ。
なんだか今日の夢はとてもリアルで鮮明だった。

…ずっと夢の中にいたかったな…。

布団に入ったままテーブルの上をのぞくと、昨日と変わらぬ位置にそれはあった。

…黒い小さい箱。
表には金の文字が高級ブランドを高らかとアピールしている。
箱の中には、透明な石がついたリングが
今か今かと納まる指を待っている。

昨日私は、ケンジからされたプロポーズに、つい頷いてしまった。


「イタタ…」


あまり眠れなかったせいか、さっきから何度も頭がズキズキとする。

私は重い体を起こして、コーヒーメーカーをセットする。
すぐにシュウシュウと音をたてて辺りがコーヒーの香りで充満した。

はぁ…

思わずため息がもれる。

こうなることを全く予想していなかったと言えば嘘になるけど…

まさかこんな急なんて…

戸惑っているの?
自分に問いただす。
ケンジはとても優しいし、結婚にだって憧れはある。


「何も迷う事なんてないのに。」


わざと声にだしてみたものの、誰もいない部屋では一層空しい気持ちになる。

箱を開けると、丸みを帯びた4本の爪が透明な石を掲げていた。
日の光を受けたリングはいっそう輝きを増している。

私はその輝きがただただ眩しくて…静かに箱を閉じた。




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