月曜の朝だと言うのに、私の足取りは重かった。

昨日のプロポーズに思わずうなずいてしまった私は…つまり…
プロポーズを受けた事になる。
今更ちょっと待って下さい、なんて言えない。
でも…


でも…に続く言葉がみつからない。
結婚、というものがまだ現実味を帯びていないだけなのか。
答えのでない悶々とした気持ちでいつもの電車に乗り込む。
休み明けの電車なのに、疲れた顔をしたサラリーマンでひしめきあっていて
さらに足取りを重くさせる。


「おはよ!」


駅を3つ過ぎたあたりで、急に肩を叩かれて私は振り返った。

茶色い髪は大きくカールされていて、長いまつげには、黒々とマスカラがたっぷりぬられている。
電車の中のオジサン達の視線が一気に集まる。


「なぁに?ちょっと暗い顔してんじゃないわよ。」


勢いよくバシッと叩かれた私は、軽くよろめいた。

やぁだ、もう、とマキはガハハと笑う。
その口元には、ピンクのグロスが…こちらもたっぷり塗ってある。

その声の主は、オジサン達の視線をもろともせず、短いスカートをひるがえすと、
空いている座席を見つけてドカッと座り込んだ。

彼女は同僚のマキ。
外見はとても華やかで、女らしいマキだが、蓋をあけてみれば
私の知っている男の中の誰より一番「男」らしい。
そんなマキは良き同僚であり、一番の親友だ。


「あーケンジと喧嘩でもしたんでしょ。」


「失礼」といいながら、無理やり私分の座席を確保しようとするマキを制して
私はつり革につかまったまま肩をすくめる。
と、その長いまつげがバシバシと上下した。


「わかったわかった、話聞いてあげるから。今日仕事終わった後、飲みいこ。
いいとこ見つけたんだよねぇ。」


強引に誘うマキをみて、別に話を聞く聞かないに関わらず誘うつもりだったんだな…と思ったけれど
それはあえて口にはしない事にした。



photo by Harmony
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